AllIsHackedOff

Just a memo, just a progress

新プロダクト開発のお気持ち合わせ、使うためのインセプションデッキ作成

 

この記事は、【2022 LayerX Advent Calendar(概念) 18日目の記事です。

前回はSaaS事業部の羽倉さんの記事でした。

次回は、SaaS事業部のswatchさんの記事が出る予定です!

 

こんにちは。LayerXFintech事業部でリードエンジニアをやっているサルバ (@MasashiSalvador)です。最近の悩み事は日々増える積ん読です。

 

現在はLayerXから三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下MDMと呼びます)に出向してアセットマネジメント業務、証券業務の効率化、投資家向けオルタナ投資サービスの開発を行っています。

 

MDMに出向しているメンバーの働き方はざべすさんの下記の記事に詳しいです。

note.com

 

 

今回はMDM問わず、LayerXのプロダクト開発でよく行う「インセプションデッキの作成」について、何をどうやって、どういうところに気をつけて作っているかについて書きたいと思います。

 

インセプションデッキとは

プロジェクトの目的や背景、優先順位を簡潔に伝えるためのドキュメントです。

プロジェクトを進める上でのプロジェクトメンバーの共通認識を記すために作ります。

型(フォーマット)が決まっていて、型に当てはめながら議論してドキュメントに起こすことでメンバー感問わずプロジェクト関係者の目線や認識が揃っていくことにいつも驚かされます。

 

インセプションデッキは

  • わたしたちはなぜここにいるのか?(=プロジェクトのミッション)
  • エレベーターピッチ(=プロダクトの特徴を簡潔に述べるもの)
  • やること/やらないことリスト
  • トレードオフスライダー(=大上段の優先度の明確化)

を含むのですが、中には「なぜここにいるのか?」などこっ恥ずかしい、プロジェクトが進んでしまったあとだと話しづらいものもあります。

この"話しづらさ"は端的にちゃぶ台返し的になってしまう(ので議論のコストが大きい)のもそうですし、プロジェクトの進行とともに忙しくなる中で都度問いかけると端的に進まなくなってしまうのもあると思います。

※もちろん、議論できるチーム状態は最高だし、すべきなのですが、前提や方向性が揃っていればそれに越したことはないよねというお話

 

僕のこれまでの経験でいうと

  • 自社の新規プロダクト開発で関係メンバー全員で
  • MDMで(もちろんLayerX以外の出向メンバー込で)関係メンバー全員で
  • (コンサルをやっていたころは)クライアント含め関係メンバー全員で

インセプションデッキを作成しました。

 

参考資料

github.com

 

dev.classmethod.jp

 

blog.nextscape.net

実際の作り方/作っているもの

0. 参加メンバーの時間を確保する(2.5h - 4h、半日くらいのイメージ)

・会議の司会を決めておく

1. 材料を集める

 ・議論のための材料を精査する

  ・競合や先行サービスの調査

  ・潜在ユーザへのインタビュー

  ・定量データの収拾

2. テンプレートを印刷(もしくはデジタルで参加者の手元で作業できるようにして)ワークショップ形式で議論を進める。参加者のワーク結果をホワイトボードに張り出してお気持ちを言っていくようにする。

・人数が多ければグループ分けをして、各位の想いを発表していくいく

・その場で文言に落とし込む

3. (2)の結果をキレイにする。

 

議論の場はスクラム開発における振り返り会に近いかもしれません。メンバー全員が気軽に意見を述べられる場を作ることが大切です。

 

オンライン開催する場合はMiroやGoogle Jamboardなどを使って、とにかくカジュアルに思ったことを書き出して発表できる場を設定します。

 

認識を揃える。と言っても何もない状態からただはじめるだけではいいアウトプットがでないので、司会はワークショップのインセプションデッキのフォーマットを眺めておいて、潜在顧客の声など、議論の際にファクトとして使えそうなものを逆算して集めておきます。

 

型どおりにすべて埋めることが目的ではないので、プロジェクトに必要そうなアウトプットをあらかじめ抜粋しておいて、タイムテーブルをくんでしまうのがいいと思います。

 

下記で(★)をつけたものはだいたいどのプロジェクトでも作成しておいたほうがよいと思います。LayerXの場合はインセプションデッキの雛形がGoogle Driveで共有されており、プロジェクトごとに必要なものを抜粋して作成するようにしています。

 

インセプションデッキの結果だけではなく、議論の過程=参加者のワークシートがスキャンされて残されているので、議論の場の熱気やコンテクストも読み取ることができます(プロダクト開発のノウハウが組織に蓄積されていっている感があります)

 

インセプションデッキの型

  • (★)わたしたちはなぜここにいるのか?
  • (★)エレベーターピッチ
  • (★)やること/やらないことリスト
  • (★)トレードオフスライダー
  • パッケージデザイン
  • プロジェクトコミュニティ
  • 技術的な解決策
  • etc

 

実際のタイムテーブルの例としては(これだと多分押してしまいますが)下記のようになります。

 

14:00 - 14:10 わたしたちはなぜここにいるのか? のシートを参加者個人で埋める

14:10 - 14:20 ひとりずつシートを張り出し、お気持ちを述べて認識を合わせる

14:20 - 14:25 認識を合わせて、文言に落とし込む

14:25 - 14:35 エレベーターピッチ のシートを参加者個人で埋める

14:35 - 14:45 ひとりずつシートを張り出し、お気持ちを述べて認識を合わせる

14:45 - 14:50 認識を合わせて、文言に落とし込む

14:50 - 14:55 休憩

... 以下完成するまで繰り返し

気をつけている点

  • 作ることが目的ではないので、どう「使うか」を考える
    • どういう文言を入れると、あとでどういう議論につながるかを考えてまとめる
      • 「例:New-ProductはAな商品を提供する」とインセプションデッキに記載
      • 後日「これって本当にAになってるのかな?」「A度がたりないんじゃない?」などと施策やプロダクト品質の話をする時に使える
  • やる/やらないリストには「進め方」や「思い」のようなものも入れる
    • 「過剰に品質を優先して納期を妥協することはしない」
    • 「競合を過度に意識しすぎない」
    • 「お客様ひとりひとりの声を聞く(聞ける状態を作る)」
    • など
  • ひとりひとりのワークシートの発表の中で言葉に込めた「お気持ち」を深堀りして聞く/「お気持ち」を言いやすい議事進行をする
    • 初っ端からきれいな文言に落とし込むのは(誰にとっても)難しい
      • シュッととかイケてるとか個人ワークで書いてもよい。大事なのはその中のお気持ちをすり合わせること

 

他にもある気がしますが、気づいたらまた追記したりTwitterに書きたいと思います。